親族とのトラブルを避けるために

2019年1月17日

 遺言と認知症

 近年、被相続人が認知症になった状況で遺言が残された場合、その死後に相続人の間で遺言の効力をめぐる争いが生じることは珍しくありません。

 ひとたび紛争化すれば、遺言内容を検討することはもちろん、病院の各種検査結果、カルテ、診断書、看護・介護記録などの医学的資料を収集し、被相続人の日頃の意向や遺言前後の日常生活の状況を具体的に把握する作業が必要になります。

 しかし、遺言のトラブルは被相続人の死後に起きる争いであり、生前のように病状や意思を直接確認できないという難しさがあるため、裁判も長期化する傾向にあります。

 では、認知症を巡る遺言のトラブルを避けるためには、どのような点に配慮するのが望ましいでしょうか。

 法的な見地からは、遺言方式に留意する必要があります。遭難などの特殊な場合を除き、遺言には①自筆証書遺言②秘密証書遺言③公正証書遺言の3つの方式がありますが、トラブルの予防という観点からは、公正証書遺言の活用が推奨されます。

 公正証書遺言は、公証人という法律の専門家の関与のもと、口授という厳格な手続を踏んで作成される点で、他の2つの方式に比較して確度が高いと考えられます(ただし、実務上は口授の順序が緩和され、公正証書遺言であっても無効とされる場合があります)。

 また、被相続人の遺言能力に疑問がある場合、公証人は診断書などの提出を求めて原本を保存したり、被相続人の状況などを聞き取った書面を保管することが求められています。これにより、信頼性の高い資料を残すことができる可能性が高まります。

 さらに医学的な見地から、スクリーニング検査の受検や医師の診断書など、認知症に関する医学的資料を残しておくことも推奨されます。

 公証人は医師ではないため、被相続人の医学的な心身の状態まで考慮して遺言能力を判断することはできません。また、被相続人の死後に医師の診断書を取ろうとしても、「治療を目的としない診断書は作成していません」と断られる可能性がありますし、事後的に作成された診断書がどこまで信用できるかという問題も残ります。

 被相続人の生前からこのような医学的資料を確保しておくことは、さまざまなトラブルの予防になると考えられます。

(弁護士法人マーキュリー・ジェネラル)



マーキュリー・ジェネラル弁護士法人

新着記事

人気記事

カテゴリ